樹脂めっきとは?特徴・工程・用途・メリットと課題をわかりやすく解説

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樹脂めっきとは

樹脂めっき(プラスチックめっき)は、ABS樹脂やポリカーボネートなどのプラスチック表面に金属膜を形成する技術です。金属はもともと導電性があるため容易にめっきできますが、 樹脂は絶縁体のため、そのままでは金属を付着させられません。そこで、表面を特殊処理して金属が密着しやすい状態をつくり、無電解めっきで導電層を形成したうえで、 電気めっきにより耐久性や装飾性を付与します。

この技術は1960年代にABS樹脂を対象に開発され、日本でも自動車部品や電子機器の分野を中心に普及しました。軽量化と意匠性を両立できる点から、現在でも多くの産業で活用されています。

樹脂めっきの工程

樹脂めっきは、いくつかの工程を経て行われます。代表的な流れは次のとおりです。

1. 前処理

  • 脱脂・洗浄:成形時に付着した油分や離型剤を除去します。
  • エッチング:薬液で表面を微細に粗化し、金属膜との密着性を高めます。
  • 活性化処理:パラジウムなどの触媒を付与し、次工程の無電解めっきを可能にします。

2. 無電解めっき

化学反応を利用して金属(主にニッケルや銅)を析出させ、樹脂表面に薄い導電層を形成します。これにより、電気めっきが可能になります。形状が複雑な部品でも比較的均一にめっきできるのが特徴です。

3. 電気めっき

導電性を得た部品に対し、通常の電気めっきを行います。銅やニッケルで下地を整え、最終的にクロムや金、銀などを施すことで、装飾性や耐摩耗性を強化します。自動車部品では、多層構造によって美観と耐久性を両立させています。

樹脂めっきの主な用途

樹脂めっきは「軽くて成形しやすい」という樹脂の特徴と、「金属光沢や耐久性」を組み合わせられるため、幅広い分野で使われています。

  • 自動車部品:フロントグリル、バンパー、ドアハンドル、エンブレムなど
  • 電子機器:スマートフォン筐体、パソコン部品、テレビ周辺部材など
  • 住宅設備・建材:水栓金具、ドアノブ、家具部品など
  • 装飾品:アクセサリーや意匠部材など

樹脂めっきのメリット

  • 軽量化:金属部品を樹脂+めっきに置き換えることで、製品全体を軽量化できる。
  • デザイン自由度:樹脂は複雑な形状に成形しやすく、金属質感を付与することで意匠性が高まる。
  • 機能性:耐食性・耐摩耗性・導電性・電磁シールド性など、製品に必要な機能を追加できる。
  • 高級感:クロムや金などを施すことで、金属光沢を持ち、高級感を演出できる。

樹脂めっきの課題・注意点

  • 密着性の確保:樹脂と金属の性質が異なるため、剥離やクラックのリスクがある。
  • 変形の可能性:めっき処理時の温度や薬液の影響で、樹脂部品が変形する場合がある。
  • 工程管理の難しさ:多段階の処理と薬液管理が必要で、品質維持には高い技術力が求められる。
  • 樹脂や形状の制約:すべての樹脂に適用できるわけではなく、部品形状によっては膜厚の均一性に課題が生じる。
  • 環境規制への対応:従来の薬液には環境負荷物質が含まれるため、環境配慮型プロセスへの移行が進んでいる。

まとめ

樹脂めっきは、樹脂素材に金属の質感や機能を付与できる表面処理技術です。軽量化やデザイン性の向上、耐食性や導電性などの機能追加により、自動車、電子機器、住宅設備、装飾品など 幅広い分野で利用されています。一方で、密着性や変形リスクといった課題もあり、設計段階からの考慮や適切な工程管理が不可欠です。

当社では、まだ量産レベルではありませんが、通常はめっきが難しいとされる樹脂素材にも対応してきました。たとえばポリスチレン材料においては、プライマーなどの下処理を行わずに、 直接銅めっきや金めっきを形成することを可能としました。また、ポリイミド、LCP(液晶ポリマー)、ポリエチレン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)といった 多様な樹脂に対しても試作の実績があります。さらに、次世代高速通信に向けた樹脂基板製造技術の研究にも取り組んでいます。


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